Mitchondrial Genome Variation in Eastern Asia and Peopling of Japan
Masashi Tanaka, Vicente M.Cabrera, Hidetoshi Shimodaira et al.
2004, Genome Reserch 14:1832-1850
2004年に発表された、MtDNAによる日本人起源研究の論文。700人近い日本人のMtDNA全配列を用い、5000近いアジアのMtDNA配列と比較して日本人の起源を論じる。宝来のDNA研究を発展させ、その後の研究の土台となっているものと思われる。
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直訳ではない。用語も正確には使わない。自分が理解しやすいようにまとめていく。
とりあえず前提から。
考古学的に日本は30000年以上前より人が住み始め、13000年前に日本とシベリアに土器文化が誕生し、弥生期以降に朝鮮半島経由で多数の人が流入したと知られている。しかし現在の日本は、1)旧石器時代および新石器時代の先住民と近年の渡来人の混合、なのか、2)先住民は現在の日本人に次第に変化し渡来人は文化への影響を残しただけで人口にはあまり影響していない、のか、3)渡来人は先住民にほぼ取って代わった、のかが明らかではなかった。
埴原は形態学により、先住民は南方起源であり、渡来人はアイヌと琉球人をのぞいて先住民と混合したという二重構造説を唱えた。古典的マーカー(Gm遺伝子などか)およびMtDNA、Ychrによる研究では、先住民の北方起源が示唆され、また先住民と渡来人はいずれも北方由来だが遺伝子的には異なるとされた。日本列島の遺伝子の65%は弥生以降の渡来人のものであったが、アイヌと琉球人においては20%未満であった、アイヌと琉球人は遺伝子的には分化した別々の集団であることがわかった。
しかし、これまではDNAを調査したサンプル数が少なく、またMtDNAのnoncoding region(HVI,HVII)に限った研究が主体であり、とくにnoncoding regionのみではアジアの重要なハプロタイプが識別できないこともあり、あいまいさが避けられないものであった。
そこでこの研究では672人の日本人MtDNA全配列を調査し、それをもとにハプログループを決定し、それをもとに報告されているアジアのMtDNA配列データを見直し、解析した。そして各時代ごとに日本とアジアの人々の系統地理学的な比較検討を行った。
ここからresultsに入り、各ハプログループごとの説明が続く。次回以降各ハプログループごとのまとめ。