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fairyism備忘録

現状のところ、人類史および日本への拡散について管理者が学習してゆくブログです。

石刃とMode4についての補足

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石刃とMode4についての補足

 前回の記事に対するコメントで、石刃とmodeについてご教示いただきましたので、少し調べてみました。

 英語版Wikipediaの"Stone tool"(2014/10/2時点)の項目を見ると、Grahame Clarkが1969年発行のWorld Prehistory 第2版の中で、石器の進歩においてMode1から5という5段階の石器技術を想定した、としています。

 この原典の表[1]では、

 

 このようになっています。

 Mode4は"punch-struck blades with steep retouch"なので、「間接打撃によって作成された鋭い石刃」となるかと思われます。
 ただ、World Prehistoryの他の箇所にはもっと詳細なMode4の説明があります[2]。
 石刃を取る技術自体はかなり古くにさかのぼり、レバントとキレナイカではMode3にあたるルヴァロア技法よりも古い層で見つかるそうです。しかし、石刃がMode3に変わって技術の主体になるのはもっと後のことであり、それは文化全体が進歩して石刃技術が進歩するまでは、石刃の有用性がさほど高いものではなかったからだと思われます。
 石刃は、さまざまな石器を調製するための原材として適しており、そのためMode4になって石刃は石器技術の中心となったのだそうです。
 Mode4は石刃から二次加工されたナイフ型石器、尖頭器、彫器など、多数の道具による文化であり、このような多彩な道具を用途によって使い分けていたところに特徴がある、としています。

 つまり、原典におけるMode4は、石刃を取る技術そのものではなく、石刃から二次加工してさまざまな道具を作り用途によって使い分ける石器技法全体を示していると思われます。

 一方、「石刃(blade)」の定義を見てみると、「長くて、幅が狭くて、エッジが鋭く、薄い、剥片」[3]などと、厳密なものではなさそうです。最もシンプルには、長さが幅の2倍以上、とされます。ただ、このような剥片はチョッピングツールやハンドアックスを作るときにも偶然できてしまうものです[4]。
 考古学で言う創造性は遺跡から見つかるモノの一式をまとめていい、たまたま新しい形式のものが1つだけ入っていたとしても、偶然産み出された可能性も高く、ほとんど無視されます[5]。なので、石刃技法とする場合は、石刃が連続的・計画的に作られているかどうかが問題になります。
 たとえば50万年以上前の南アフリカに石刃技法があったとする論文[6]でも、著者らは、これらの石刃が、"systematically manufactured from highly-prepared cores"「周到に準備された石核から、計画的に生産された」ものであることを示した、と述べています。
 しかしこれは、Grahame ClarkがMode3とする"flake tools from prepared cores"と同等のものと思われます。

 単に石刃技法(blade technology)、とする場合はそれはMode3に相当し、石刃からの二次加工を含めた技術全体を指す場合、それはMode4に当たると思われます。ただ、「石刃技法」という言葉がMode4に当たる技術全体を指す場合もあるようで、「石刃」あるいは「石刃技法」と書かれていた場合、それがMode3かMode4かということは、全体の文脈から判断しないとならないことがあるようです。
 特に日本では、4万年前以降のMode4にあたる石刃が著明で、それ以前の中期旧石器時代に関しては存在自体にまだ議論のある状況です。なので日本について書かれたもので「石刃技法」とあれば、それは原則としてMode4にあたるものです。しかし、海外について書かれた「石刃」あるいは「石刃技法」はMode3を念頭として書かれていることもありえます。

 正直なところ、自分は相当この部分で混乱しておりました。なので整理してまとめてみました。

1) Grahame Clark:WORLD PREHISTORY A NEW OUTLINE 2nd Edition: pp31: Cambridge University Press(1969)
2) Grahame Clark:WORLD PREHISTORY A NEW OUTLINE 2nd Edition: pp48: Cambridge University Press(1969)
3) The Adventures of ARCHAEOLOGY WORDSMITH: http://www.archaeologywordsmith.com/index.php
4) Sally McBreaty, Alison S.Brooks: The revolution that wasn't: a new interpretation of the origin of modern human behavior: Journal of Human Evolution 39:453:pp495:(2000)
5) 西秋良宏 他:ネアンデルタール人を語る-考古学と脳科学の対話: 考古資料に基づく旧人・新人の学習行動の実証的研究 1 「交替劇」A01班2010年度研究報告:1:pp33(2010)
6) Jayne Wilkins, Michael Chazan: Blade production ~500 thousand years ago at Kathu Pan 1, South Africa: support for a multiple origins hypothesis for early Middle Pleistocene blade technologies: Journal of Archaeological Science 39:1883(2012)

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