忍者ブログ

fairyism備忘録

現状のところ、人類史および日本への拡散について管理者が学習してゆくブログです。

Mitchondrial Genome Variation in Eastern Asia and Peopling of Japan 2004 を読んでみる(4)

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

Mitchondrial Genome Variation in Eastern Asia and Peopling of Japan 2004 を読んでみる(4)

プチ用語 FST(Fixation Index)
 集団の遺伝的な距離を求めるための方法。F値(F-Statistics 近交係数)の特殊な場合として適用され、SNPsやマイクロサテライトなどの遺伝的相違の頻度から計算される。

プチ用語 D match distances
 この論文では、2集団について、それぞれのハプログループにおける頻度の差を合計したものである。

 Lineage Sorting and Population Pooling
 系統の整列と集団の統合

 今回のmtDNA全配列を用いた報告により110のアジアの系列を明らかにできたが、83の系列を用いて全アジアの部分的な配列を用いた解析を行ってみた。部分的な配列でどのくらい正しい結果が出るか知るため、HVSI領域のみを用いて今回用いた日本人の系列を推測してみたが、5%が間違った、あるいは系列が明らかにできなかった。
 4713の配列のうち、9.2%が系列を明白にできなかった。それでもなお、統計的に有意な集団解析が可能であると考えられた。
 まず日本本土、アイヌ、琉球の集団をアジア各地の集団とF-STによって解析した。日本本土と近い関係にあるのは、韓国と山東(Shandong)の漢族、遼寧(Liaoning)および新疆ウイグル(Xinjiang)の漢族と土族(Tu/モンゴル)、西安(Xi'an)とSaliの漢族および彝族(Yi/古羌→雲南)、であった。
 他の集団から最も大きくはずれるのはタイのSakai先住民であり、彼らはハプログループBを欠き、報告者のいうC6クラスター(D4aに属する)が豊富である。タイで最も古い先住民と考えられる彼らが、ハプログループNから派生する枝を全く持っていないことは、それが遺伝子浮動によるものでなければ、南アジアにおいてはマクロハプログループNはマクロハプログループMと違う由来をもっているという従来の説に合致する。SakaiからはアフリカのL2aも報告されており、最初に出アフリカしたグループにはL3だけでなく若干のL2も含まれていた可能性が示唆されている。
 次に外れるのはシベリアの集団であり、彼らは遺伝子浮動に由来する固有ハプログループの頻度の差が大きく、一つのグループとすることができない。
 その次に外れるのは中国の少数民族である、Lisu Nu Lahuおよび台湾先住民である。予想外のことに、他の中国少数民族であるBai Sali Tuについては北中国の漢民族クラスターの中に収まる。一方、タイ、ベトナム、カンボジアについては南中国グループに入る。またこれまでの報告通り、中国漢民族は均一の集団ではなかった。
 本土日本およびアイヌ、琉球は、韓国、ブリヤート、チベットおよび北中国などを含む集団と大きなグループを作る。その中でまず本土日本から外れるのがアイヌで、琉球がその次で、それでも本土日本と韓国は同一グループと考えられる。アイヌと琉球が同一でないことは宝来も報告していたが、今回の報告でも琉球に多いM7a1 D4a1 D4bがアイヌに欠けていることが認められた。
 
 The Peoplng of Japan
 日本への移住

 日本と琉球およびアイヌ、および周辺アジアとの関連を知るために、ハプロタイプF-STおよびsequence match identitiesによって解析した。本土日本においてこの2つには相関があったが、琉球とアイヌでは相関を認めなかった。これは、先住民にハプロタイプの変動や系統の消失を伴う遺伝子浮動があったためと考えられ、また可能性としては低いが、長期の孤立による新規の遺伝子変異の影響も考え得る。
 F-STによれば本土日本は韓国ついで北中国と関連し、琉球は南シベリアのブリヤートと近くついで南中国と近い。アイヌは本土日本、韓国、北中国と近い。
 sequence matchによれば本土日本はまず韓国ついでブリヤート、琉球はブリヤートと非常に近くついで韓国、アイヌは比較的相同配列に乏しいがチュクチ、コリヤーク、カムチャツカにやや近い。
 この結果をみると、本土日本は韓国を経由して北アジアからの影響を強く受けており、琉球はまず南アジアと北アジア両方からの影響をうけ、そこに本土日本からの混合により北からの影響が加わっており、アイヌはカムチャツカからの影響のために日本で最も特殊な集団となっている。

 このような解析はハプログループやハプロタイプの頻度を比較しているが、そもそも頻度というものは遺伝子浮動の影響をかなり受けやすい。そこで頻度によらない解析として、本土日本・アイヌ・琉球それぞれが他の各地とどのていど系統を共有しているかを検討した。
 サンプル数の違いはあるが、本土日本およびアイヌにおいてハプロタイプ数はサンプル数の50%以下であり、琉球ではサンプル数の84%であった。
 それぞれの集団における集団独自のハプロタイプは、アイヌでは13%にすぎなかったが本土日本では60%、琉球では45%であった。これはアイヌに遺伝子浮動の影響があるものと思われた。本土日本と琉球のみに共有されるハプロタイプは3%、アイヌでは2%であった、ただ大陸アジアとも共有しているものを含めるとそれぞれ6% 3%となった。本土日本は他のアジアと系統の21%を共有していた。一方、琉球とアイヌは約50%の系統を本土日本と共有していたが、アジアとはそれぞれ10%および21%であり、これは本土日本が大陸から影響を受けているためと思われた。
 日本と大陸アジアのどこか一つの地域にのみ共有されている系統に注目すると、そのいちばんの共有源は韓国であり、本土日本の55%、また琉球の50%、アイヌの50%に見られた。しかし、他の共有源は異なっており、アイヌは北中国とシベリアで、琉球は北中国と中央アジアでいずれも北方であったのに比べ、本土日本は南中国が17.5%で、北中国と中央アジアがそれぞれ12.5%であった。2.5%とまれではあるがインドネシアとのみ共有する系統も見られた。一方でシベリアあるいはチベットと共有している系統はいずれも他のアジアのどこかに同一の系統が見られた。このことから、古代の日本人は北アジアから移住してきており、南方からの影響は後代の移住によるものと推測された。しかしながらより古い影響というのは系統の共有では解析できないことは知っておかなければならない。
 アイヌと大陸アジアあるいは琉球と大陸アジアに共有されている系統で、日本と共有されている系統はない。アイヌが共有しているハプログループA G M9 D5の枝はすべて近年のシベリアの影響による。一方琉球が共有しているものはM本幹からの系統であり、より古い南中国からの影響と合致する。このような影響はアイヌおよび琉球に固有の系統によっても観測される。まず、マクロハプログループN系統に属する系統は、アイヌで50%と琉球の15%よりずっと多く、しかもアイヌはN N9b Yを起源としているのに対し琉球はF Bという南方由来のNを起源としている。アイヌの50%はそれぞれ起源の異なるM系統(M M7c G1 D5a)に属しているが、琉球のMはM7a(41%) M7b2(18%)に集中しており、これらは琉球において多様性が最大である。しかしこの系統はおそらくは南中国が起源であると考えられる。アイヌと琉球は大きく分離した集団というだけでなく、そもそもの起源すら異なるということが示唆される。
 一致する系統がなくとも、日本およびアジア各地のハプログループ頻度および多様性の地理的な分布によって古い関連性を追うことができる。たとえばM9 M10 M12 D4b F1cについてはチベットがもっとも高い頻度を示す。おもしろいことにこの中でM12は、現在中国では見られず、韓国と日本にのみ存在する。
PR

コメント

プロフィール

HN:
Haina
性別:
非公開

P R