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fairyism備忘録

現状のところ、人類史および日本への拡散について管理者が学習してゆくブログです。

出アフリカは13万年前。MIS5とMIS4の気候区地図を再現して現生人類のアジアへの道のりを再現する。という論文 (3)

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出アフリカは13万年前。MIS5とMIS4の気候区地図を再現して現生人類のアジアへの道のりを再現する。という論文 (3)

Human dispersal across diverse environments of Asia during the Upper Pleistocene
Quaternary International 300:32(2013)
 論文内の古気候区地図に、彼らの主張する拡散ルートを矢印で付加したものを作ってみました。
・MIS5の西ユーラシア
・MIS4の西ユーラシア
・MIS5の東ユーラシア
・MIS4の東ユーラシア
1.地中海性気候
 果実、ナッツ、種子に富む
2.地中海性パークステップ(いわゆる肥沃な三角地帯の植生)
 植物性の資源に富む、大型草食動物がいる
3.乾燥ステップ(中東、南中央アジアにおける)
 植物性資源はあるが上記に劣る。小さい草食動物
4.砂漠
 植物・動物ともに極小で、人類はいないかわずか
5.半砂漠、サヘル気候
 種子の小さな植物があり、果実はある。小さい草食動物
6.河川流域の通路
 水生の植物が豊富。鳥や魚がいて、乾期には大型の動物もいる
7.熱帯サバナ/樹林・草原の混合(インドの熱帯常緑樹地帯)
 穀物の原生種を含む植生多数。果実豊富。大型草食動物
8.熱帯乾燥樹林(インドの熱帯乾燥落葉樹地帯)
 果実、ナッツ、根茎、野生豆など。大型草食動物は群が小さく、小さい動物は捕まえにくい
9.熱帯湿潤樹林・草原の混合(東インドとガンジス、東南アジア)
 野生イネを含む植物多数。季節性の果実多数。大型草食動物。小さい動物は捕まえにくい
10.熱帯雨林、インドの湿潤落葉樹地帯
 種子はまばら。ナッツと果実は季節的には豊富になるが予測が困難。大型動物はまれ、小さい動物は捕まえにくい。人類はおそらくごく少数
11.熱帯山岳植生
 果実、種子、根茎はあるが局地的で季節的。大型動物は少なく小さい動物は捕まえにくい。人類はおそらく少数
12.亜熱帯山岳・山地植生(南中国の常緑樹林を含む)
 ドングリを含む多数の季節性の果実とナッツ、植物資源に富む。大型草食動物は多いが群が小さく、小さい動物は捕まえにくい
13.高地針葉樹植生/高地砂漠(チベット高原)
 わずかな季節性のナッツと果実。植物資源に乏しい。まばらな小動物。人類は少数と思われる
14.常緑-落葉樹混合林
 ドングリを含む多数の季節性の果実とナッツ、植物資源に富むが根茎は少ない。大型草食動物は多いが群が小さく、小さい動物は捕まえにくい
15.落葉-針葉樹混合林
 果実とナッツは14より少なく毒性高い。植物資源は季節性で局在的。大型動物は豊富で、小さい動物は捕まえにくい
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 現在主流となっている60000年前頃の出アフリカ説は、mtDNAの年代推定にかなり引きずられているような印象があります。しかし、そもそものmtDNA分子時計には問題が多く、絶対年代を与えるための指標が、1)600万~1600万年前ぐらいの化石年代、2)最近数世代から推測される最近の遺伝子変異率、しかなく、いずれにしても数万年前ぐらいの時期にそのままあてはめるのは問題があります。これは、常染色体をもとにした年代推定でも事情は同じであり、常染色体の遺伝子変異率も推計に倍くらいの差が出ています。
 そうなると、いったん分子時計のことを棚上げして、別の方法で過去の人類拡散を推定することに意味が出てきます。この論文はまさにそれをやったもので、古気候区の丹念な再現に大きな説得力があります。改めてこの目で見てみると、アラビアに10万年以上前の遺跡が見つかること、インドやペルシャで10万年前程度と考えられる遺跡があることも、MIS5における出アフリカと整合性が出てきます。
 ただ、mtDNAなどの分子時計と一致しないことには説明が必要になります。この論文ではM Bufferという概念について説明がありました。人口が拡大するときには分子時計が一時的に止まり、それはMIS5~4のインドで起こった、というのが主張だと思います。分子時計は確かに人口規模や社会的なありかたにより大きく影響を受けるものであり、彼らの意見は重要であると思います。
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